福岡地方裁判所久留米支部 昭和45年(わ)160号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔主文〕被告人を懲役二年に処する。
この裁判の確定した日から二年間右刑の執行を猶予する。
〔判決理由〕被告人は、福岡県八女市大字本町一の二二番地食肉販売業吉本幸雄方に住み込み、店員として稼働中、未婚の身で同僚店員伊藤恒雄と情交関係を結んで妊娠し、その処置に窮していたところ、昭和四五年四月一四日朝方から陣痛を催したが、被告人は便秘による腹痛と思い、何度も右吉本方の便所に入つたりしているうちに、同日午後四時頃右便所において嬰児(女児)を分娩し便槽内に生み落としたことに気づいたが、右便槽内に落ちた嬰児はただちに自らまたは他人の手を借りて救助しなければ死に至ることを知り、かつ容易に吉本方の家族店員に助けを求めてこれを救助し得たのであるから、被告人としてはかかる措置をとるべき義務があるのにかかわらず、突嗟に右嬰児を殺害しようと決意し、その処置をしないで右嬰児を便槽内に放置し、よつて右嬰児をして糞便による窒息のためまもなく死亡させて殺害したものである。(伊藤敦夫 川崎貞夫 岩井俊)